昨夜は遅く寝たので、朝はゆっくり起床する。 周辺には特別観光地もないが、やることもないので散策に出かける。 ホテルから少し山を登ったところに、チェナ温泉の冬場のオーロラ観測小屋がある。 現在は閉じているが、小屋の中には暖炉もあるし、外にはトイレもあり、 結構快適に観測できるはずである。 ただし、真冬にホテルからこの小屋に来るまでが寒そうだ。

チェナホットスプリングスホテル内の敷地は、きれいに整備され、なかなか快適な居住空間を作っている。 自家発電装置もあり、とてもアラスカ遠北の地とは思えない。 しかし昨日チェックインの際にお世話になった日本人スタッフの人の話によると、 この辺も、一歩外に出ればまだまだ過酷な自然が待っている。 住民が出かけたまま吹雪に遭遇し行方不明になるとかいう出来事も日常茶飯事のようだ。

チェナ温泉というからには、ここには温泉がある。 しかし、日本のような温泉を想像しているとちょっと期待外れだ。 小さなジャグジーと、子供用程度の温水プールがあるのみで、 これで時間つぶしをしようと考えていると無理がある。

という事で、車で周辺のドライブに出かけた。 チェナ温泉の入り口には、「ＥＮＤ　ＯＦ　ＲＯＡＤ」という標札が立てられており、 文字通りここで道はとぎれている。 そこで、行きに来た道を戻ってみる。 昨夜は外灯もない真っ暗闇の中を走っていたので何も見えなかったが、 この道に沿っていくつか横道が延びている。 途中、車を路肩に止めて横道に進むと、 池などがあり、その池のほとりで、現地の人がその場で獲ったのであろう 鳥の羽根をむしってバーケキューキャンプをしていた。さすがアラスカ(^_^;)。

今日はホテルで奮発して豪勢な夕飯を取り、元気をつけて、 さて再び２３時頃から、昨日と同じ場所でオーロラ待機を始める。 夕食時、今日は晴れてくれ〜と祈ったせいか、昨日とは違って、ところどころに星が見える。 いい兆候ではあるが、しかし雲も出ている･･･この分では見えないかも、と不安がよぎるが、 とにもかくにも、オーロラ遭遇のチャンスは今日しかない。 せっかくここまで来たのだから、お願いだから出てちょうだいという気持ちで一杯だ。 三日前にここにもきれいなオーロラが出たと言っていたが、多分私達がアンカレッジで見たオーロラと同一のものだろう。

そんな中、夜中の一時を回った頃であろうか。突然見上げていた空が見事な星空になった。 寒さを忘れて車の外に出て、しばし、天の川の流れる星空を仰ぐ。 CNNの天気予報によると、ずっと雨のはずだった割りにはすごい天気の回復力である。

しかし、肝心のオーロラは一向に出現する気配がない。 今出れば、もうばっちり見えるのに、 いったいオーロラ出現の予兆はなに？と思いながら、ひたすら待ち続ける。 ホテルのボイラー室の明かりが、まるで夜空をオーロラのように染めている。 あれがオーロラだったらいいのに、と思うが、所詮人工の光。

すでに２時３０分、あと３０分立っても出現しなければ、あきらめてもどるしかないのだろうか、 そんな事を考えながら、あいかわらず車の中で横になりながらボ〜ッと空を見つめていた。 するといつのまにか目の前の空に、うっすらと河の流れるごとく長く広がっている雲が表れている。 しばらくは、また雲が出てきのかと思って見ていたのだが、 ど〜も雲とは様子が違うような気がする。 雲というよりは、巨大彗星の尾のような感じだ。 もしやオーロラだったりして？と思うがいまいち自信がない。 姉は反対の空を見ていて気づいていないようだったが、話した瞬間 「あれオーロラだよ！オーロラ！」と叫ぶと車外に飛び出した。

車外から空を見上げると、その巨大彗星の尾ような白いオーロラは、一本の帯のように空のずっと先まで続いている。 よくよく見ると、時折そのオーロラはゆらめいている。まさしくオーロラだ。 本当は赤いオーロラが一番きれいだと言われていて、白いオーロラは一番単調なものらしいが、 それでも待って待って待ち続けてこの目で見たオーロラの感激はひとしおで、釘付けになってオーロラを眺めていた。

そうこうしているうちに、広場の奥の山からサッ〜と霧がおりてきて 広場を靄の中に隠す。しばらくすると霧がまたサッーと晴れてオーロラを出現させ、 そんなこんなを２〜３回くりかえしているうちに いつの間にやらオーロラは消えていた。 この日、目的を達して、大満足で眠りについたのは、夜中の４時近くであった。

しか〜し、パシャパシャと撮ったオーロラの写真は、 案の定真っ暗けっけで、何も写っていなかった。やはりインスタントカメラ。 姉はビデオ撮影に励んでいたが、これもまた全滅だった(T_T)。