国家非常事態宣言下のネパ

国家非常事態宣言下のネパ－ル

ネパ－ルはこの年、重大事件に見舞われました。人民戦線を繰り返すマオイスト問題は以前からくすぶっていましたが、そんな最中の6月、結婚に反対された王子が王宮内で乱射事件をおこし、国王一家、王族が10人近くも射殺されてしまったのです。王子も警備兵に撃たれ、その後亡くなりました。本当に王子が錯乱して10人もの身内を殺害したのか？あまりの事件に、ネパ－ル国内では次期国王の陰謀説等も囁かれ、一時政情が不安定になります。
しかし真相は闇の中なのか、陰謀説の主役、前国王の弟が新国王に就任します。一時、新国王の就任で一応の落ち着きを取り戻したネパ－ルですが、 11月末、今度はマオイストが一方的に停戦条約を破り各地で攻撃を始めたのです。

マオイストはついにテロリストとみなされ、軍がマオイスト掃討作戦を展開する上で必要不可欠な措置として、国家非常事態宣言が発令されました。エベレスト街道の拠点、ルクラの空港から歩いて２日の距離にあるソルクンブ地方のソル地区では、この戦闘によりマオイストら200名以上に上る死者が出たという話です。世界を震撼させた同時多発テロにひき続くこの事態にネパ－ルの観光業は大打撃を受けます。 12月において、ネパ－ルを訪れた観光客は通常の半数以下だったそうです。

という事で･･･
国家非常事態宣言の出ている最中、はっきりいってのこのことお遊びで出かけたくはありません。しか～し、申し込んだツア－は一向に催行中止にならないのです。小心者の私が、催行中止にならない理由をしつこく旅行会社に問い合わせたお返事は次のようでした。

①マオイストは今までに観光客をタ－ゲットにした事はない。

②外務省もネパ－ル大使館も特に観光には支障ないと言っている。

③私たちが行くトレッキングル－トは、安全な場所である。

出発までに、私もネットでいろいろ情報収集しましたが、このお返事に関しては疑問の塊でした(^^;) 。

①観光客をタ－ゲットにしなくても、爆弾テロや抗争等に巻き込まれる可能性は十分ある。
実際、昨年カトマンズ滞在中のマオイストがらみのストの最中ですら、一般市民が数名死亡しているのだから、さらに大規模と化している現状においては、何が起こるかわからない。

②ネパ－ル大使館にビザを取得しに行った際、受付の人に大丈夫か聞いたら、言葉に詰まっていた(^^;) 。

③追い詰められたマオイストが資金調達の為等に、一番お金を持っている観光客に対し、山賊行為を働く可能性は十分ある。それに安全だとされているカトマンズのリングロ－ド内やパタンでも爆弾事件がおきており、範囲が拡大しつつある。

でも、そんな事をウジウジ考えつつ、結局は行っちゃったんですが(^^;) さて、現状はどうであったかというと、結論としては何事もなくスム－ズな旅行でした。

空港の様子

・カトマンズ国際空港では、ツア－客のせいか荷物のチェックも受けずすんなりクリア－。
でも、香港からカトマンズに行くロイヤルネパ－ル航空の手荷物検査の時、お裁縫セットに入っていたはさみを捨てられた。成田ではＯＫという事で返してくれたのに(^^;) 。

・カトマンズ空港の周辺には大勢の軍人がライフル銃を持って警備していた。

・カトマンズの国内線乗り場はスキスキ状態だった。私達の団体以外数人しか客がいなかった。

・国内線でも荷物の中身まで見られる事はなかった。（最初の2～3人は見られたようだが。）

・ポカラ空港のゲ－ト横には、土嚢を積んだ堀の中で外に向かって戦闘態勢でライフル銃を構えた警備兵がいた。

・帰国の際、一度空港前で兵士がチェックにバスに入ってきたけれど、すぐに通してくれた。

市内の様子

・カトマンズ市内は昼間は特に変わりなく、夜は身分証明書の携帯が義務つけられせいもあるのか、人通りがほとんどなく、交通量も少なめ、反面武装した兵士をよく見かけた。

・エベレストホテルの入口には、空港と同じような検知器が取り付けられていた。

・ポカラ市内は昼間も閑散としていた。観光客が少ない。兵士もあまりみかけなかったし、それゆえ、かえってのどかな感じを受けた。

トレッキング中の様子

・別段何の支障もなくトレッキング遂行。

・トレッキング客も少なめ。チャ－タ－便が12/28しか飛ばなくなったので、寸前のこの時期に日本人がほとんどいないのはわかるが、外国人のトレッキング客もあまりいなかった。

・めずらしく外国人の団体トレッキング客を２組見かけた。ポカラ等で個人で申し込んだ人たちの寄せ集めだろうとの事。やはり数人で行動するのは危ないという事なのか･･･？

・トレッキング終了後、ナヤプルからポカラに向かうバスが、マオイストが逃走中なのか？途中で一斉検問に出くわし、バスから全員降ろされて数百ｍ先まで歩かされたが、特別何事もなし。（歩かされている最中に青空トイレに走って行く人もいたぐらい緊張感は無し(^^;) ）

という事で、当初の心配が嘘のようにスム－ズな旅行でしたが、こういった情勢の場合、いつどこで何が起こるかわかりませんから、備えあって憂い無し、情報収集はやっぱり必要ですよね。

ところで、前国王はネパ－ルの国民に大変親しまれていたようで、お店やバスの中には、未だに前国王一家の写真が飾られていました。現在の国王の写真を眼にしたのは、エベレストホテルのロビ－だけでした。

No1 No2 No3 国家非常事態宣言下のﾈﾊﾟ-ﾙｽﾗｲﾄﾞｼｮ-

　